エンドユーザーの声に応えられた時が1番嬉しい。
ニーズは時代によって変わる。だからこそ、
疑問と可能性を持ち続けたいんです。
工業高校卒業後、プラント設計会社に就職。
高校の授業で習得したCADの技術を活かし、
AUTO CADにて、作図設計を行う。
3年後、同会社より独立した先輩と事務所を設立。
主に図面のトレース、修正業務に約12年間携わったのち、
派遣会社での業務も経験。
現在所属のろ過装置メーカーにて設計の仕事を担当し、
1年後に入社。
現在は、2児の父親としても奮闘しながら、
日々新しい可能性を探求している。
使用CAD:AUTO CAD
使用年数:20年
プラント設計のやりがいは、そのスケールの大きさでした。
設計を目指したきっかけは?
もともと叔父が設計をやっていましたね。僕自身は出来の悪い子供だったのですが(笑)、美術とか技術とか、そういった成績だけは比較的良かったので、合ってるのかなと自分なりに思っていましたね。ものを作ることも元々好きでした。それで、高校は工業系に進みました。高校にしては就職率が高く、幸い引き合いも多いような学校でした。ただ、実際就職したのは、学校の先生の繋がりでしたね。紹介をいただいて、設計事務所に進みました。
設計では、初めにどのような分野のお仕事を?
初めに入った設計事務所ではプラント関連です。発電所やプラントに関する、大きな会社でした。発電所工事の図面を書いたり、配管のルートを決めていくような作業が中心でした。入った頃は、時代がちょうどCADを導入し始めた頃だったので、先輩が書いた図面をCAD化するのが主な仕事でしたね。CADは工業高校の授業の科目に入っていましたね。
プラント設計のやりがいはどういったことでしたか?
まず、建物のスケールが大きいんですよね。ほとんどが発電所や石油関連なので。入社してまず、中東のプラントにたずさわることになり、仕組みを覚えるために2週間くらいイスラエルへ連れて行かれて(笑)。実際にやることは物を測ったりすることくらいなんですが、砂漠地帯とは行かないまでも、都市から離れた特殊な環境での仕事でした。実際に現場を見て、そこで初めてどういうものを書いていったらいいのかという感覚を掴めた感じもしましたね。教えてもらって、仕組みも覚えて・・・という感じですね。特殊だなと思うのは、普通は設計の時にA1とかA0のサイズの図面を使うのですが、プラント設計はそうじゃないんです。 A0の紙が巻物みたいに、5メートルくらいの長さになっている図面を作ったりというスケール感があるんですよね。そこがプラント設計の面白味というか・・・大きな規模の物を作っているんだという実感や、やりがいがありましたね。
6畳1間のアパートを事務所に、独立。CADの仕事はニーズがありました。
20代前半で、1度独立されたそうですね。
そうですね。会社から独立した先輩と事務所をつくりました。僕が21歳、先輩が26、27歳の頃ですね。6畳1間の、家賃でいうと1万円の畳のアパートから始まりましたよ(笑)。そういった物件にCADの機械やプロッターという専用の印刷機を持ち込んで、設計の仕事をしていましたね。隙間産業というと変なのですが、当時はまだ図面にドラフターを使っているような時代だったので、そういったCADの仕事は新しく、需要があったんですよね。何かを特別に設計したりとか、自分で開発したりしなくても、既存の図面をデータ化して新しい図面を作ったり、オペレーションが出来ました。CADも当時高価なものだったので、当時はある種特別な職業だったのかもしれません。
時代によってニーズの変化は感じましたか?
すごく感じましたね。CADも、平面の2Dから3Dに切り替わるようなタイミングで、3Dのニーズが当時はよくわからなかったので積極的には取り入れなかったですが、今は3Dもよく使われていますし・・・時代は変わったなと驚きます。建物でいうと、僕が独立した時はちょうどダイオキシン問題があったので、東京都のゴミ処理施設の図面が結構出ていました。結局、ダイオキシンに対応する施設に変えなければならないので、そういった改修工事の図面が必要だったんですね。かなりの数が出ましたね。仕事としては、最初は油とか水処理、そういった配管系や発電所の図面を書いていましたが、そういったものは減ってきていました。その中で、たまたまそういった環境問題が出てきて、付随する施設などにたずさわるようになりました。当時話題になりましたが、六ケ所村の再処理工場のプラントのプルトニウムなんかにもたずさわりました。建物には時代が反映しますよね。その時代時代によって、ニーズも変わっていくなと思いましたね。
環境問題と密接な関わりがあるのですね。
そうなんです。今お世話になっている会社は、水処理の会社で、プールろ過器の図面をひいているんですが、どちらかというと学校や官公庁の仕事が多いです。そういった場所では、環境的というか、エコ的なものが多く導入されていると感じますね。例えば今、学校の改修工事なんかもありますが、学校には、雨水ろ過といって、雨水を利用したろ過のシステムが入っています。それを校庭の植木に使ったり、トイレなどの雑用水などに使ったり、通常の上水道で使っていたものを節約したり、災害用に備えたり・・・いろいろと多用に変わってきているんです。学校は今じゃ太陽光発電が付いていたり、エレベーターやエアコンが付いていたり・・・昔では考えられないような豪華な施設ですよね(笑)。やはりそれは、3.11以降、耐震という意味も含めて、規制が厳しくなったり変わってきたりという面を感じますね。
エンドユーザーからの生の声こそ、仕事のよろこび。
印象的だったお仕事は?
今所属しているろ過装置メーカーは、なんというか、すごく長い人が多いんですよね。僕は全く畑ちがいの素人だからこそ、いろいろなものを見た時に「これはムダなんじゃないかな」という点が見えたりしたんです。「なぜこうなんだろう」と思うと、実は理由はなくて、単純に前任の設計者の考えが反映されたりしていた。でも、長い目で見た時に、必要がないものだったりするんです。印象的な仕事としては、たまたま会社の方針で新しいものを作るという時に、僕が担当して試験的に作ることとなりました。それは新しいろ過器だったんですが、実際に製品化が決まりました。1番やりがいがありましたね。ただ、想定外なことは起こりますね(笑)。問題も起こりますし、逆に、思った以上にうまくいったりもします。それが面白いですよね。実際に使う人は学校の先生たちが多いんですが、「使いやすくなった」「問題が解決した」という声が聞けた時に良かったなと思います。今は業界としてメーカーも競争しているので、壊れにくいのか、安いのか・・・何か特色がないといけないと思います。それはいつも考えています。チャンスがあれば面白いものを作りたいと思っています。そういう時代だとも思いますね。
そのこだわりや発想はどこから?
僕の祖父がすごく変わっていて、小さい頃から「発明家になれ」とか「特許をとれ」とか言われていたんですよね(笑)。死ぬ間際まで病院で会計士の資格をとろうと勉強をしていたような、向上心の高い人でしたね。新しい視点でものを考えたいというのは、どこかでその影響もあるのかもしれません。それから、幸い仕事的にすごく忙しいというわけではないんですね。プールの時期などのシーズン以外は、集中的な作業があるわけではないんです。そういう時は、いろいろ考えたり、作ったりしています。実際の業務としては、施工図や進行図、図面を書けばいいという内容なので。余裕のある時間があれば、何か新しいことを考えたりしていますね。それが楽しい時間でもあります。
お仕事のよろこびとは?
エンドユーザーというか、僕でいうと学校の先生が主なお客さんになりますが、その人たちからの声ですね。「今までこんなに使いにくかったのに、すごく便利になった」という声が直接もらえると、本当に嬉しいですよね。こういうのがあったらいいよね、ということに対して、叶えてあげられるというか・・・そういう難問に応えられた時が1番嬉しいですね。仕事って、やろうと思えばなんでも出来るなって、そう思います。最初の方は、正直自己満足で仕事をしていた気がします。でも・・・きっかけは飲食店でのアルバイトだったりするんですが・・・、接客をして、人に接して見えてきたよろこびの実感が大きいなと、ある時に気付きました。その上で改めて設計に戻ったら、見えてきたんですよね。今後は、今主流になっているものとは違う観点のものを設計してみたいなと思っています。後は、全く別分野のこともしてみたいです。例えば・・・父親は車メーカーだったのですが、車が自動化するという話が今進んでいますよね。そうすると、それを受け止める道路でしたり、カーナビでしたり・・・付随して、色々なところの変化が出てくると思うんです。そのあたりに注目してみたいです。頭をやわらかくして、可能性を考えたいですね!
必要な情報はどのように得ますか?
主にインターネットですね。情報も早い。知識的なところでしたりとか、他メーカーさんの技術でしたりとか、インターネットで今はかなりの勉強が出来ますよね。調べる気があれば、今はわからないことってなくなってきてますよね。
趣味や息抜きは何ですか?
料理ですね。結構しますよ!週末は全部料理します。子供は4歳と1歳半なんですが、週末は公園にも遊びにいきます。砂場で本気で作品を作ったりします。今子供に人気の「チャギントン」とか、お城とか。ものを作るというか、そういうところを見せてあげたいなという気持ちがありますね。
最後にひとこと
子供が出来てから、家族のために仕事をしている、という感覚になっています。
そうなってしまったという悪い意味ではなく、それが大きなやりがいです。
安定を追い求めるのではなく、いい意味でこだわりを持たず、新しいことに出会っていきたいです!
若々しい笑顔で、楽しそうにお話して下さった北山さんは、CADの創成期ともいえる時期から、20年ほど設計に携わり続けたスペシャリスト。仕事人としての視点の豊かさもさることながら、2児のパパとしての人間力も光っていました。新しい世界を垣間見せていただいた気分です。ありがとうございました!